第22章 政宗の小姓(R18)
三成が瑠璃を指導していた日の事。
「石田殿、本日は子守で大変ですな」
「垣屋殿…」
にこやかに声を掛けて来た相手に対し、三成は弱り顏になる。
「本日は政宗様が多忙な為、私を手伝っていただいています。
玉瑛殿、此方は内山氏の家臣で垣屋殿です」
内山氏は最近、織田傘下に入った大名で、それに付随して山内氏家臣である垣屋も傘下となり入城していた。
所謂、新参者だ。
それにもかかわらず、瑠璃と三成に物申して来た。
それほど、憎たらしいのか、恐れ知らずか、
考え無しか、はたまた、日頃の鬱憤晴らしか。
「玉瑛と申します。右も左もわかりませんので、
ご鞭撻のほど宜しくお願い致します」
冷静かつ温和な態度で応じ、目礼をする瑠璃に、
垣屋は侮蔑の笑みを見せる。
「刀も振るえぬような優男が、伊達様の役に立てるとは思えぬ。どうやって取り入ったのか策を聞きたいものだな」
軽蔑の言葉を残すと垣屋はさっさと行ってしまった。
「申し訳ありません。……大丈夫ですか?玉瑛殿」
「三成様が謝る事ではございません。
よくある事でしょう。お気になさらないで下さい」
苦渋の表情の三成とは対照的に、瑠璃は何のこと無さそうに笑っている。
よくある事、瑠璃にとってはよくある事だった。
(私には関係無いことだったのに…)