第21章 呼ばれた男
「気分はどうだ」
源蔵の方に歩いて来る。
「身成を整えたら、それなりに見れるようになったな」
源蔵の向かいに座る政宗。
「今日は忙しくて、お前をここに1人にして悪かったな」
「いや…姫さんが一緒にいてくれたし…。
なんか、訳のわからないうちに飯まで喰わせてもらって……」
「姫…瑠璃のことか」
茶を運んで来た瑠璃を チラッと見ると、
瑠璃が ふふ っと笑った。
「兄さん…俺…」
何か言おうとして口ごもる。
察した政宗が先に口を開いた。
「小田原では世話になった。礼を言う。
ここに来たって事は覚悟はいいんだな?
後で弱音を吐いても戻れないぞ。
歯を食いしばって刀工になれ。しかも、名刀工と言われる程の刀鍛冶になれ。
それ以外に望むことはない」
源蔵を見る政宗の眼は刀のごとく鋭かった。
「なんで俺なんかを…なれないかも知れないじゃねぇか」
源蔵は見えない先の自分に、恐れと不安を抱いている。
「確かに、なれないと思ってるヤツにはなれないだろうな」
否定してみせる。