第21章 呼ばれた男
御殿に残された源蔵は、あれよあれよ と言う間に、玄関で足を洗われ、湯浴みをさせられ、身成を整えられた。
「……なんだ、コレ…」
源蔵はまだ、自分が置かれている状況がよく飲み込めないで、目を瞬いている。
目の前には 膳が用意されている。
運んで来たのは瑠璃。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「はぁ……」
どう見ても女中じゃなさそうな、若く美しい女性が、自分の目の前で、にこやかにお茶を淹れているのが、俄かには信じられず、気の無い返事しか出てこなかった。
「お腹空いてないですか?」
「…いや……」
口を半開きにして瑠璃を見る源蔵。
「旅をして来られて疲れたでしょう。食事をしたら少し休まれると良いですよ。
えーーっと……」
「源蔵」
「源蔵さん。私は瑠璃と言います。よろしくね」
やんわりと笑う瑠璃を ぼーっと見つめる。
(綺麗な人だなぁ。姫さんって皆、こんなんか?)
部屋を見回しても、瑠璃を見ても、
今までの自分の生活と違い過ぎて落ち着かない。
「クスッ…すぐに慣れますよ。
ご飯冷めるから、どうぞ召し上がって」
グゥゥゥ〜
ご飯 と聞いて源蔵の腹が反応した。
「あっ、いっ、い、ただきますっ」
源蔵は恥ずかしくて慌てて箸を取る。
「はい、召し上がれ」
瑠璃が笑う。