第21章 呼ばれた男
それから10分ほど過ぎた頃、脇門が開いた。
「ご苦労だな」
門番に声をかけて、政宗が姿を現した。
「受け取ったのは、確かに俺の書いた文だ」
門番が慌てて頭を下げる。
「騒がせて悪かったな」
「お侍の兄さん!」
「おいおい、俺の名前知ってんだろ。よく来たな源蔵」
満足そうに笑う政宗に、源蔵が駆け寄ってくる。
「待ってたぞ」
「薬屋のジィさんに読んでもらった。馬一頭は、売っちまったって…」
「解ってる。その為に預けたんだ。
源蔵、話しは後で聞く。来い」
門番に、馬を厩舎へ連れて行くよう頼み、
源蔵を促して登ってきた道を下って行く。
「城に入れと言ってやりたい処だが、
その成りじゃ、入れてやれない。
俺の御殿で休んでろ」
政宗は源蔵を御殿に案内すると、女中に言いつけて、用が有る と言って又すぐに城へ引き返した。