第18章 女神の創傷
「…ありがとうございます。政宗」
瑠璃の腕が抱きしめ返してくる。
(私はあの日、決別したはずだった。
あの家と、母と家族と別れ、政宗と生きるって決めたのに、ずっと、囚われていたんだ)
「そっか……」
(捨てていいんだ……)
政宗の言葉が少し瑠璃に届く。
どんな言葉が傷を負った心に届くかは、政宗にも瑠璃本人にも分からない。
けれど、それを2人で探しながら一緒に居ればいい。
((少しだけ近づいた))
同じ重い話をしても、今は昨日より気分が良かった。
(少しずつ捨てればいいんだ、塗替えていこう。そうだ、そうしよう……)
晴れない霧の中だけど、足元の道が見えた、そんな気がした。
「俺は、お前が今より、少しでも甘えてくれる事を望むけどな」
高望みしないよう言葉を選んで、伝える。
「政宗」
「何だ?難しい話しは終わりだ。今はもうしない」
「ありがとうございます」
胸に頬を寄せて礼を言う瑠璃。
「たくさん考えてくれて、たくさん言葉をくれて、ありがとう」
「謝罪の次は感謝の言葉か?」
政宗は擽ったそうに目を細める。