第18章 女神の創傷
ー霧の切れ間ー
明け方、少しの寒さで目を覚ました瑠璃。
(目が開かない…。泣きながら眠ったんだ…)
間近にある政宗の端整な顔。
(政宗も疲れてたのに……)
「ごめんね……」
空気を震わせただけの声で囁く。
(あんな、激しい感情、いつぶりだろう…)
思い出して恥ずかしくなった。
「穴があったら、入りたいー…」
と呟くと、
「それ以上、隠れるのは止めてくれ」
政宗が目を開けた。
「…起こしちゃいましたか?」
「いや、昨日、眠ったお前を抱いて、早く寝たから、早く目が覚めただけだ」
言いながら、政宗が、瑠璃の腫れた目を見る。
それに気付き、瑠璃は両手で顔を覆い隠す。
「これは、泣きながら寝たからで……」
「もう少し寝るか?」
政宗の問いに、両手を外して答える。
「ううん、このまま政宗と話したい」
まだ覚醒前の表情と口調で、フワッと笑う。
「ねぇ、昨日…綺麗だった?」
「俺、誉めただろ。女神みたいだって」
心外だな、と言わんばかりの政宗に瑠璃は
「女の子はいつだって、真っ直ぐに誉められたいんですよ」
と言う。
「ふーん、そうか。解った」
瑠璃自身はそうして欲しいと、言っているのだと理解する。