第18章 女神の創傷
(やっと……)
扉を一枚開けたような気がした。
(今日はここまでだ、瑠璃)
手を差し出しても、また振り払われるかもしれない恐れから、手を伸ばせず、手を取れないでいる。
だから「信じろ」と言ったところで簡単には信じられないでいる。
幼少の頃から何度そんな思いをしてきたのか、を考えると胸が痛む。
抱きしめた胸に縋り付くようにして、嗚咽しながら泣く瑠璃。
声を出して泣くのは、戦から連れ戻り初めて目を覚ました時以来だが、あの時とは泣き方も泣き声も、全く違う。
今、目の前で泣いている瑠璃は、なぜか、とても幼くて痛々しくて、悲しくなる。
迷子の童女が声を上げて泣くような感じ。
そんな瑠璃の背中をそっと撫でる。
いくらかそうしていると、涙を止めた瑠璃が想いを吐露する。
「…頑張っても、頑張っても、要求は天のように高くて………。
でも、必要とされているのは兄様だけで、
いったい…私は、どうしたらよかったのか……」
悔しそで寂しそうな声音。
俯いていて表情は見て取れない。