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《イケメン戦国》未来から来たお姫様

第18章 女神の創傷



その衝撃の言葉を誰に言われたのかは容易に察しがついた。
(母上に)

自分の幼少期に浴びせられた心無い言葉が思い出されたけれど、政宗は思った。
(上辺では必要とされながら、そんな言葉を言われるなら、最初から疎まれる方がマシだ)

今、瑠璃の瞳は政宗を映しているのか、
母を映しているのか判らないが、自分を睨みつける瑠璃を、鎮痛の面持ちで見つめ続ける。

「認めて欲しかったわ!でも駄目だった。
泣いても努力しても、届かなかったっ。
手を伸ばしても、払われた。
だから そんな望みも捨てた。
手も、伸ばさなかった…。
なのに、どうして今頃…、私の心を揺さぶるのよッ!
政宗……放っておいてよ…」
腹の底から絞り出すような声は、段々と弱くなって、怒りは悲しみに変わった。
嘲笑を浮かべて涙を溢す。
胸倉を掴んでいた手の力も弱くなる。

政宗は瑠璃の痛ましく深い心の傷の一片を見た。
『嫌いにならないで…』と言ったのは、
言いたくて言えず、言っても届かなかった
幼少期の瑠璃の言葉だ。
「放っておけるかよ。こんなに泣いてるのに」
政宗は瑠璃の頬を拭ってやる。
「これ以上、浅ましく、醜く、弱い私を見せたくないからーー…」
襟元を力なく掴んだまま項垂れる瑠璃。
そんな瑠璃に対して政宗は
「嫌いにもならないし、浅ましくも、醜くも弱くもねぇよ。
それは隠す必要のない普通の感情だ」
童子(子供)に諭すように応えながら、頭を撫でる。
「ふつう、の……」
普通ってなんだろう、と瑠璃は、濡れ揺れる不思議そうな瞳で政宗を見上げる。


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