第18章 女神の創傷
(ゾッとするほど、冷めた怒り。けど、これは…)
自分に向けられた憎悪でないことは明確だった。
「私は…私は何の為に耐えたの?
どんなに我慢しても、努力しても、
報われないの⁉︎」
これは、政宗が褒め無かった事だけを言っている訳ではない。
今までの事を全て含めて発憤している。
怒りを含んでいるのに、どこか冷静な瑠璃の銀鼠色の瞳。
「『褒められたいなんて、おこがましい』の?どうなのよ!」
(な、んて……)
政宗は言葉が無かった。
耳を疑った。
絶句したまま瑠璃を見る。
(褒められたいと思うのは人なら当たり前だ。
それを『おこがましい』と言われたのか)
さすがの政宗も衝撃だった。
『ただ、褒めて欲しかった』と言った瑠璃。
(手放しでなんの裏表もなく褒められた事が無いのか……?)
胸倉を掴んだまま、突き刺す様な、それそこ本当に刀のような冷たく鋭い眼で、政宗を見ている瑠璃。