第17章 新年拝賀5(宴の刻)
「元気にしていたようだが、少し痩せたのではないか」
話をすり替えるかのように言って、光秀の細く長い指が、瑠璃の頬をなで顎を捉える。
「長旅でしたので」
「……まさか、馬に乗って来たのか。
無謀にも程がある。政宗は止めなかったのか?」
驚いた光秀は、まるで、心配する父親か兄のような口調になる。
「拝賀の日まで時間が無くて、仕方なかったんです」
「…ああ、そうか。
とは言え…長旅の後、休む間もなく今日とは、
疲れたであろう。よく頑張ったな、瑠璃」
珍しく、光秀が揶揄うでもなく、ストレートに労いの言葉をくれたので、瑠璃の涙腺が一気に緩んだ。
バッッ と袖で顔を隠す。
「照れるな、瑠璃。久しぶりの再会、
それほど嬉しかったか?」
光秀は会話で瑠璃が泣いているのを隠してくれる。
こくこくと声無しに頷き、光秀は何事もないように、更に話を続ける。
「船にも乗ったのか」
瑠璃は頷くだけ。
「どうだった?」
「…………打ち上げられた、魚でした……」
ようやく、沈んだ声で、袖の下から答える。
「ふはははは、
船酔いか。お前が魚になったところ、見てみたかったぞ」
大層 愉快そうに声を上げて笑う光秀。