第17章 新年拝賀5(宴の刻)
「お、おい、家康、飲み過ぎるなよ。明日から大名謁見があるんだ」
「うるさいですよ、秀吉さんはっ。わかってますから」
秀吉の小言に、苛々としながら答える。
「秀吉様、家康様なら大丈夫ですよ」
横から口を挟んできた三成に
「お前は大丈夫じゃなくなれ」
益々、苛々と冷たくあしらう。
瑠璃はそんな3人を可笑しそうに見ていた。
そこに、
「瑠璃、来い」
光秀の声。
「光秀様」
「俺を放っておくとはいい度胸だな」
しれっと言う唇は意地悪く弧を描く。
瑠璃は流れるように立ち上がりながら、
「光秀様が呼んで下さらなかったんでしょう」
と笑う。
猫が飼主に寄っていくように、ふらりゆらり と光秀の方に歩く。
徳利を差し出され、瑠璃は光秀の横に座ると、そっと盃を満たす。
慣れた様子の2人。
だけど、久しぶりの少し擽ったい雰囲気。
「兎だな」
「ウサギですか?」
「猫の目は銀鼠色だが、兎の目は赤い」
揶揄って笑う。
「光秀様のせいですよ」
「何故。暇潰しになっただろう。
礼は無いのか?」
意地悪く笑う光秀。
けれど、その金色の瞳は優しく瑠璃を見ていた。
「本当に、光秀様は、気が利きますね。涙が出るほどに……」
眉をハの字に下げて、泣かないように努めて笑う。