第17章 新年拝賀5(宴の刻)
嫌そうな顔をしながら、それでも三成を本気で拒絶しない家康を見た瑠璃。
「嫌い嫌いも好きのうち……ですね」
と呟く。と、家康が
「はぁ?
嫌いだよ。馬鹿な事言わないでくれる」
血迷った事を言うなと言わんばかりに凄む。
『家康様の事だなんて言ってないです』と
言う言葉を飲み込んで瑠璃は、
「なんだか親近感」
と言って口元を隠して笑った。
歪んだ者は真っ直ぐでキラキラした者には近寄り難さを感じる。
瑠璃も家康も似ているのかもしれない。
「……」
仕草は大人だが、なんとも幼い笑い方。
それを初めて目にした家康は、口を開けて瑠璃を凝視している。
(……反則だろ、そんな笑顔、出来るなんて……)
凝視されている事に気付いた瑠璃が、
もう一度花のように家康に笑いかける。
「‼︎」
はた と我に返った家康は、口元を押さえ、
頬から耳までを赤くしてそっぽを向く。
(朝の謁見では艶然と澄ました笑顔をしてたくせにっっ)
家康はお膳にのる椀の中の芋に グサッ と箸を立てると、酒をあおった。