第17章 新年拝賀5(宴の刻)
「そう言えば、謁見後の琴はお前が弾いてたのか」
秀吉が思い出したように話す。
何か言われるかと思い身構えた瑠璃だったが、特に何の評価も意見も言わない秀吉。
「はい」
瑠璃も返事だけをすると、
「美しい調べでした」
笑顔の三成。
(三成様は音痴なのかしら……)
困惑の瑠璃。
「公家の、出なら、琴くらいは、当たり前なんだな」
感心した様子の秀吉だか、
歯切れが悪いことに瑠璃は気づいた。
まだ、狐か羊か見定かねている秀吉。
(豊臣秀吉……農民から這い上がり、巧みな話術と人に好かれる術をもって、天下を目指した努力家……)
故に、人を見る。
瑠璃も秀吉を測りかねていた。
そんなことは余所に
「秀吉様、瑠璃様は琴だけでなく、
漢詩もお出来になるんです!
さすが、和歌の家の出ですね」
三成が瞳をキラキラさせて興奮気味に話す。
「瑠璃様、今度、私と漢詩を読みましょう!」
見つめられてたじろぐ瑠璃。
「おい家康。瑠璃、困ってないか?逃げ腰だぞ」
秀吉が家康に耳打ちする。
「三成に虜にならない女いるんだな…
三成に微笑まれて困る女初めて見た。
新鮮だなあ」
心底驚いている秀吉。
「俺より三成に怯えるとか、どう言う事ですかねっ」
困った笑顔を見せている瑠璃をみて、
なんだか三成に負けた気がしてムッとする家康。