第17章 新年拝賀5(宴の刻)
高座では信長が瑠璃を見定めていた。
「刀は捨てたのか、瑠璃」
「…宴には必要ないので置いて来ました」
捨てたのではなく、置いて来たと答える。
「刀は重いか」
瑠璃は出された盃を満たす。
「今までは重くありませんでしたが、
最近、ひ弱になったようで……」
信長は盃をあおる。
「人は人を強くもするが弱くもするものだ。
焦るでない。急いては事を仕損じるぞ」
緋い目をチラリと向けて、瑠璃の注いだ酒をまたあおると
「あの女くらい、のほほんとしておっても良いのだ」
美弥を見て笑う信長。
瑠璃も、朗らかに笑ったり、怒ったりしている美弥を見た。
(あの人は謁見の時もただ一人喜怒哀楽を見せてましたね)
「お前はややっこしいな。女はあの様に単純で良いのだぞ」
くくくと喉で笑って瑠璃に盃を差し出すと、
「お前も飲め!」
と命令した。
瑠璃が高座から降りると三成に呼ばれた。
「瑠璃様、こちらにどうぞ」
初対面と同じくエンジェルスマイル。
それに、酒も入って艶としたエンジェルスマイル。