第16章 新年拝賀4(女神の涙琴)
動揺していたのは他の武将達も同じだったが、
瑠璃本人は、際どいところと、上半身を、男達の前に晒す事になっても、動揺どころか落ち着き払って、
戸惑いも後悔も感じさせなかった。
冬の夜空のように冷え冷えとさえして見えた。
「にしても、まさか、秀吉に足を上げるとはな」
信長の仕掛けた悪戯には秀吉だけでなく、皆驚いた。
光秀以外は。
「あれはッッ」
慌てて何か言おうとした瑠璃だったが、
「通快だったな。秀吉の焦った顔ったらありゃしねぇ」
口元を覆って、ククククと肩を震わせる政宗。
「それに比べ、瑠璃の能面のような顔」
思い出して更に笑う。
これは、褒めているのか、面白がっているのか分からない。
それにしても、感情を押し殺し耐えていたであろう瑠璃に対し、「能面」とは…他にも例えようがあるだろうに。
(なんでもない事みたいに……能面って…)
女心は複雑だった。
特に今の瑠璃は、「能面」と言われ褒められているとは、到底思えない。