第16章 新年拝賀4(女神の涙琴)
さすがに精神が疲れた…。
警戒心は人より強い方だと思う。
緊張も恐れも身震いも普通にする。
隠してる、悟られないようにしてるだけ…。
(目を逸らさ無かったんじゃない。逸らせなかった…)
思い出しても竦み上がりそうになる。
隠しきれただろうか、優然と笑えていただろうか。
対応はあれで良かったのか、無礼非礼は無かっただろうか。
(今頃、心配になってきた…)
『笑いなさい、笑顔は心を開く武器ですよ』
母が言っていたのを思い出した。
どんな状況でも打破出来るのは笑顔だと。
嫌いな母の言葉と顔を思い出した。
実際どうかは判らないけれど、あながち
間違いではない理屈だ。
だけど、相手の心は開けるが、自分の心は
どうなのだろう。
(ダメ…今、笑顔も作りたくない…)
項垂れる。
そしてもう一度空を見上げる。
独り 自分を取り戻す為の時間。
瑠璃の大切な時間だった。