第16章 新年拝賀4(女神の涙琴)
その頃、先に部屋に戻っていた瑠璃は、
部屋から外を眺めるのに飽きたのか、
部屋から逃亡しようとしていた。
薄く開いた襖の間から、外に人のいない事を窺うと、そっと開く。
(こんな事、久しぶりだな)
ドキドキ ワクワクする。
(子供の頃、大人の目を盗んで兄様の部屋に遊びに言った時みたい)
ちょっとイケナイコトをする子供の気持ち。
少しの後ろめたさを押して部屋から出た。
誰にも見つからないように足早に進む。
薄明るい城内をグルグルと歩いて、
程なくして玄関口が見えた。
ほとんど迷わずに外に出れたことに、
小さく可愛いガッツポーズをした。
外に出ると刺すように冷たい風が吹き付ける。
「気持ちいい……」
歩いて行くと美しく造られた池があった。
そばの石に腰掛け、大きく息を吸って、空へと吐き出す。
(脳が疲れた…人生でこんなに頭使ったの初めてかも…)
独り苦笑する。
一度にたくさんの事を考えたり、意図して考えなかったりして、頭が痛い。