第2章 女神の正体
「おう、複雑に考えても頭が痛いだけだ。
生きてる事を楽しむなら、単純な方がいいさ」
「そう……ですね…」
瑠璃は思案しながら返事をした。
そんな瑠璃の事を、楽しげに見ながら政宗が言う。
「さぁ、瑠璃。今度はお前の番だ。
見せてくれるんだろ?冷泉の証を」
さっきまで優しかった蒼い瞳が、獲物を
狙うように攻撃的に鋭くなった。
「今更、嫌だとか言うなよ」
政宗の挑発にも瑠璃は涼しい顔で笑って
「言いませんよ」
と言った。
「脇息、お借りしても?」
「ああ」
政宗が差し出す。と同時に瑠璃が立ち上がった。
政宗は黙って瑠璃の行動を注視する。
左身を政宗に向けると、着物の裾を摘まむ。
錆浅黄色の小袖の裾から、淡紅色の腰巻が覗く。
その奥から、白い脚が晒し出され、
ゆっくりと 脇息に右足の爪先が掛けられる。
ハラリと 着物が太腿まで肌蹴る。
(…つっっ)
政宗は息を飲む。
政宗に見せつけるように上げられた右脚の太腿の
内側に ソレ は在った。
大きさは親指の先程だろうか。
家紋の刺青。
瑠璃はそっと脚を下ろすと、政宗を見る。
その顔にはなんの感情も浮かんでいない。
「そこなら、昼間でも見せれただろう。
勿体ぶってみせたのか?」
政宗の揶揄いも無視して、帯に手を掛けなが後ろを向く。
そのまま、帯を解き、着物を落とすと、
右腕で胸をそっと隠すと、
政宗の方に向き直る。
手と腕で見えそうで見えないように隠された左胸の脇に、
脚と同じように家紋があった。