第2章 女神の正体
「そこにも在ったのか」
「信じていただけましたか?」
行灯の火が揺れる度に瑠璃の身体が
揺れているように見える。
白い肌に落ちる影は、妖艶に政宗を誘って
いるかのようだ。
「ああ、もういい。着てくれ」
瑠璃が動くより先に、政宗が背を向ける。
着物を着る、衣擦れの音が止むまでそうしていた。
「もういいですよ」
笑いを含んだ瑠璃の声で、向き直ってみれば、
前で帯を結んで小袖を着ている瑠璃が.
ちょんと、正座をしていた。
「私、湯浴みに行きますね。
あ、それから、今日、城下に連れて行って
下さってありがとうございました」
と、頭を下げた後、スッキリとした顔で笑って立ち上がる。
部屋を出ようとする瑠璃に政宗は声を掛ける。
「俺は変わらないぞ。
けど、ハッキリ言っておく。
この時代でもお前の氏が使えるなら、利用する事もあるだろう」
「賢ければその名も身を守る武器になる。
疑心暗鬼になるな、相手を見定めろ。
それから瑠璃。
ここでは、もっと自由でいろよ。」
それは伊達の名を背負ってきたからそこの気遣いの言葉だった。
「ありがとうございます」
とだけ瑠璃は返して、そのまま行ってしまった。
はぁぁー
気配が消えてから政宗は大きく息を吐いた。
左手で顔を覆って独りごちる。
「なんだって、あんな処にあんだよ……
そんな気が無くったって、あんなの
見せられちゃたまんねぇよ……」
行灯の仄(ほの)かな灯りの中で見た、先ほどの
光景が、脳裏に蘇る。
着物の合わせを割って伸び出た白い脚。
脇息に架けられた爪先。
そこから目線を上げてゆけば、肌蹴た
着物から見せつけられた太腿。
そこまでの脚線美は息を飲んで瞬きも忘れる
くらい美しかった。
情事に至り、横たわる女の着物の裾合わせから
足が覗いても、
それ程扇情的だと感じた記憶は過去にない。
その気も無く、そんな雰囲気も全く
無いのに、それなのに…
それなのに、白い脚を見た時、
背中がゾクリとして身体が、本能が疼いた。