第2章 女神の正体
「瑠璃だな。入れよ」
気配を感じた政宗が声を掛けた。
「失礼します」
スッと開いた襖から、流れるような動作で瑠璃が
入って来る。
「さすが、時代が違えど冷泉の姫だな」
政宗は感心する。
「止めてください」
瑠璃は恨めしそうに政宗を睨む。
「へぇ、お前、そんな顔も出来るのか」
意外だという風な政宗の反応に、
「そうやって揶揄う為に私の氏を聞いたのですか。
なんで氏を聞いたのですか?」
睨んだまま瑠璃は政宗に問った。
その問いに、これ又、意外だと言う表情で
政宗は瑠璃を見た。
そして、
はははは と笑う。
「答えは簡単だ。
……気になったから。不思議に思ったから、
だな」
「え?」
瑠璃は言葉を失った。
「俺はそんに複雑じゃない。
あれこれ考えるのは性に合わん」
偉そうに言うことではないが、政宗は胸を張って笑う。
「お前は気付いてないだろが、
普段でも丁寧な言葉遣い、美しい所作をしてる。
弓、琴、茶点て、知識、これだけでも、
きちんとした家で育った教養のある者だと分かる。
そうならば、何処の家の出か知りたくなるだろ」
どうだ?と言わんばかりの政宗の説明に、
瑠璃は呆気に取られた。
「付け加えるなら、
戦場で弓を射た事、
俺の殺気にも動じなかった事。
自分の状況を受け入れても、
自分の意思を持とうとしている事。
弱そうで、流されそうなくせに、意思は強く、
哀しみを背負って生きようとしている。
お前を見てそう感じた。
氏を聞けばその強い心や、哀しみは何処から
来てるのか解ると思ったからだ」
政宗の蒼い瞳が優しく瑠璃を見つめていた。
行灯の火が揺れても、蒼い瞳は揺るがず瑠璃を
見ている。
「政宗って…単純ね」
と、瑠璃が笑う。
「やっと笑ったな」
と、政宗も笑う。