第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
「刀の様な女だな。瑠璃」
信長が瑠璃の名を呼び笑う。
その笑顔は柔らかくて、瑠璃も初めて華のように笑った。
大輪の牡丹のように美しい笑顔だった。
「皆、瑠璃が公家 北家御子左の流
下冷泉家藤原の娘だと言うことで良いな」
「ハッ」
信長の言葉に一同 頭を下げる。
「瑠璃、もう下がれ」
信長の命令で瑠璃は肌着を肩から掛け、襟を掻き合わせただけで、立ったまま礼をすると、冷淡な様子で泰然と広間を出て行った。
女中に伴われ部屋に戻った瑠璃は、
脱いだ振袖を再び着付けてもらい、独り
窓から見える琵琶湖を眺めていた。
瑠璃が退いた広間は張り詰めた空気が緩んだ。
(瑠璃……)
政宗は今すぐにでも瑠璃の側に行きたかったが、信長や他の者の手前、新年拝賀の今日ばかりは、どうにも出来なかった。
まだ何とも言えない空気の中
「信長様、酷いです!
まるで見世物みたいにっ…あれじゃあ、
瑠璃さんが可哀想です‼︎
しかも、家紋を確認したら、もう用無し、みたいに下がらせるなんてっっ」
信長を恐れない女が此処にも1人。
武将達はやれやれといった様子。