第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
「失礼致します」
もう一度秀吉に向け、瑠璃からの謝罪があり、膝の上に白いその右足先が乗せられた。
(なっ、何で?あ、足〜〜っ、みっ、見るな俺ッ)
秀吉は横を向いたり、天井を仰いだり、
下を向いては、「駄目だ」と言ってひとり
首を振ったりしている。
1人だけ、滑稽な姿だ。
濃紅の着物の内から伸び出た白い脚。
信長とそこに並ぶ皆に見えるよう、上げられた右足。
その太ももの内側に ソレはあった。
広く、深く割れた裾から伸び出る美しい脚。
それは、そこに居る男達全ての視覚に、強烈な官能的刺激を与える。
それなのに、
(お前は、本当に美しい…)
と思わせる。
身についた品性は揺るがない。
清純としていながら漂う冷厳さ。
恥じたり媚たりしない威風堂々とした態度と姿勢。
最初は赤面して焦っていた秀吉も、瑠璃の粛清な雰囲気に冷静さを取り戻す。
皆が真剣な中、信長だけは普段と変わらない態度で、パチパチと鉄扇を開いたり閉じたりしている。
(この人はどうでもいいんだ)
秀吉の膝から脚を下ろすと、裾を整え、澄んだ声で美弥を呼ぶ。
「は、はいっ」
瑠璃を凝視していた美弥は、我に返ると
慌てて返事をした。