第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
「……」
「着飾って美しく、口を開けば滑らか、状況判断も良し。そんな女がただの庶民だ農民だと言えはせぬぞ」
鋭く光る眼が瑠璃を捉え、凍え切るような気を放つ。
今までのは余興。
「光秀、この女の素性を知っているのか」
「いいえ」
知っているはずの光秀は知らないと言った。
話すのは自分ではないと、心得ている。
「政宗、貴様は知っているから城へ置いていたのであろう。話せ」
その言葉をを受け、瑠璃は一度、
静かに政宗に顔を向け、また信長に向き直った。
「相馬の戦の時、敵に囲まれていた処、矢を放ち、俺の行く手を開いてくれ、命も助かりました」
政宗が説明する。
「その辺の女が弓など引けるはずがありません。
聞けば瑠璃は、藤原定家の孫より出た、
京 藤原氏北家 御子左(みこひだり)の流。
下冷泉の娘だと」
政宗の話を聞き終わり、一同神妙な雰囲気の中
「なるほど……では女。証を示せ」
信長が淡々と命令する。
「下冷泉家の女子に持たされる証です」
瑠璃が着物の懐から懐剣を取り出し、
信長へと差し出す。
「皆、近くに寄れ」
武将達は信長の側で懐剣を囲み
「確かに雪笹だ」
「本物ですね。家紋透かし彫りだ」
「さすが、朝廷から受けた物だ」
「素晴らしいです」
とか何とか、口々に言っている。
皆、政宗の話だけでは、確実では無かったのだ。