第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
「いいえ、この度は従いに参ったのではなく、
褒美を頂きに参っただけですので」
ニッコリと嬌笑を信長に向け挑む瑠璃。
(逆上し激昂する人ではないはず……)
危険な賭けだった。
信長は平気でも、他の忠臣たる武将達の逆鱗に触れればお終いだ。
それでも瑠璃は笑顔を崩さない。
「お前っ、どの口がー!」
「止めぬか、秀吉」
目を三角にして立ち上がろうとした秀吉を、
冷静に信長が制する。
「女、面白いな。
度胸も器量も容姿も好い。気に入ったぞ」
一同が唖然とする中
「貴様の返答を聞いたコイツらの驚愕の表情(かお)。特に秀吉。
痛快であった。褒めてつかわす」
すこぶる愉快そうに肩を揺すり、白い歯を覗かせなから、鉄扇をパチパチさせて瑠璃を見る。
「恐れ入ります」
瑠璃もホッとした笑顔を覗かせた。
それを見た信長は悪戯っ子のような笑みを浮かべ
「気に入りついでに、夜伽もさせてやろう。
もちろん、貴様に拒否権はない」
ニヤリとする。
「え⁉︎」
驚きの声を上げたのは瑠璃ではなく、
信長の横に座る美弥だった。
「信長様っ、拒否権がないとか、私の時と同じような無茶を言うの、止めて下さい!」
憤慨する美弥を余所に、瑠璃が笑顔で発言する。
「拒否権は無くても、選択権は私に有りますよね?
拒否しなくても、信長様を選ぶか選ばないかは、
私の自由のはずですよね」
なんの問題もないと言った様子の瑠璃。
「…………」
武将達は度肝を抜かれ、驚嘆し、言葉を失っている。
光秀以外は。
(クククク、これは、なかなか面白い)
美弥も驚いた顔で瑠璃を見ている。