第13章 新年拝賀1(準備)
振袖は濃紅色(真紅)。それに合わせるのは瑠璃紺色の打掛け。
京西陣織で、柄は春らしく桜に扇、流れ雲の彩刺繍。
華やかに刺繍が施されているが、
瑠璃紺地のため、過度に煌びやかではない。
更に、深い色が瑠璃の白い肌を際立たせる。
政宗も同じ色の織で晴れ羽織を新調する。
最後に瑠璃用の羽織袴も頼む。
「瑠璃様の袴ですか?」
「あぁ、こいつ、馬に乗るからな」
「おやまあ、見かけによらず勇ましい姫様ですな」
2人が談笑している中、瑠璃が何か思いついたように、口を開いた。
「手袋を作って頂けませんか?」
瑠璃が言うのは乗馬用の手袋だ。
「ほう、では、手の甲はこちらの余り地を合わせ、平は鹿皮に縫う…という事ですな。
それは、華やかで女性らしくてよろしいですな」
瑠璃の説明を理解し、要約すると呉服屋の主人は感心した。
「私の方で手甲を仕上げ皮師へ持って
行きましょう。2対でよろしいですか」
「はい、よろしゅう…」
主人の言葉の抑揚に釣られ、瑠璃が京訛りを思わず出す。
しまった と口元に手を当てる瑠璃に対し、
「怜悧な方かと思うたら、可愛いお人ですな〜」
と、主人は微笑む。
それから再確認をし、採寸をして手形も取り、
呉服屋一行は帰って行った。