第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
主(あるじ)が帰ってきた御殿は俄かに慌ただしくなった。
「お帰りなさいませ、政宗様。そちらが?」
「瑠璃だ」
「瑠璃と申します。お世話になります」
なんとか笑顔を作り挨拶をする瑠璃。
「すまない。挨拶や話は今度にさせてくれ」
「心得ております。お疲れでしょう」
迎えに出た年のいった女中はニコニコと応える。
「政宗……お風呂入りたいです」
瑠璃が政宗の後ろから着物を引っ張り、
背中に小さな声で訴える。
「荷物は全て俺の部屋に置いてくれ。湯は沸いてるか?」
「勿論でございます」
女中の答えを聞くと瑠璃の手を取る。
「ま、ま、ま、まっっ…」
瑠璃は慌てて荷物の中から何かを取り出す。
「行くぞ」
手を引っ張られて湯殿に向かった。
政宗は手早く着物を脱ぐと、瑠璃の袴の帯を解く。
「ま、ま、まっ」
鍛えられた身体が間近に迫って、瑠璃は急に恥ずかしくなり、手で顔を覆う。
「瑠璃、さっきから、ま、しかいってないな」
くくく と笑って意地悪くもっと近づく。
「ち、ち、ちかっ」
「今更、照んなよ、何度も見てんだろ〜」
「それは、そうなんですが…それと、それは、それでも、えーっと……」
知ってる限り、こんなに真っ赤に照れている瑠璃は
初めてだ。
(おもしれぇぐらい、真っ赤だな)
笑いながら瑠璃の着物を脱がすと、
押し切るように湯船に連れて行く。
一緒に湯船に浸かる。
「疲れたな」
「疲れましたね」
政宗が疲れたと言うので、瑠璃も素直に同意する。