第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
瑠璃がそっと後ろを振り返り歌を詠む。
『水鳥を 北に袖振り 幾日も
初東風(はつこち)うけて 水面凍解(みなもいゆ)らむ 』瑠璃
それを受けた政宗は
『駒(馬)とめて 見送り行けば 冬木立ち
初東風吹いて 君と見やらふ』政宗
詠み返す。
(また、馬上から 一緒に吹く風を見れたらいいな…)
どちらともなくそう思った。
顔を見合わせて笑うと、また馬を出した。
日暮れ頃、安土城下に辿り着く。
「ようやく終わりだな」
「そうですね」
空が茜色に染まる冬の夕刻
2人は安土の伊達御殿に到着した。
「来たか」
(面白そうな者を伴って来おったな)
天主から遠眼鏡(望遠鏡)を覗いていた信長が
独り、ニヤリと笑った。