第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
9日目
「駆け続ける事になっても、八風峠を今日中に越えたい。
峠を越えれば明日には安土に入れる」
政宗はそれだけ言うと、時間を惜しむように馬を出発させた。
風も穏やかで、山中に入るまでの楽な行程をすべて駆け抜けた。
だが、峠は道も細く険しく、泥濘んでいて、
馬が足を踏み外さないよう、慎重に歩を進めなければならなかった。
然も、標高が高くなり、寒さも一際厳しくなった。
かじかむ指先、耳も切れそうなほど寒かった。
ここで止まれば、凍え死ぬかもしれない。
どうしても越えなければならない。
そうして、夕刻、日暮れごろようやく峠を越え、
日が暮れてから宿場に着いた。