第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
西と東の両方から名産品が集まる桑名。
街を少し見て回る事にした。
まだ、上陸して間もなくてユラユラする足元だが、沢山の物で溢れていて、目に楽しい。
あれこれ見て回る中で、瑠璃が足を止めた。
「ん?欲しい物でも見つけたか?」
政宗も一緒に足を止める。
「見ても良いですか?」
当たり前に政宗に確認する。
「お客さん、琥珀も鼈甲(べっこう)もありまっせ」
店の男が景気よく声をかけてくる。
「あの、黒い螺鈿細工の……」
「これでっか?
姉さん、目ぇ肥えてますな〜。
これな、黒鼈甲に蒔絵と螺鈿細工を施したもんで、ホンマに高価でっせ。
櫛留めと、蝶の一本挿が一対になってますねん」
支払いは政宗と見て、櫛留めを政宗に向けて差し出す。
「肥前から来たほんもんやで」
手に取ると軽くあって美しい。
本物の鼈甲に手間をかけてある。