第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
京訛りでお礼を言うと、ほだされる様な愛らしい笑顔を、船頭と船員達に向ける。
「姫さん、上方の人やったんか。知っとったらもっと良うしてやったのになぁ〜」
「十分に、よぉしてもらいましたえ。
ほんま、おおきになぁ。
ほな、また。お目にかかりおす〜」
「おお、またなー」
手を振って別れる。
船員の心を最後の最後で、一気に掴んでしまった瑠璃。
ちょっと面白くないのは政宗だった。
「瑠璃、安い愛想振り撒くな」
必要ないを釘を刺す。
「政宗〜。
安くないですよ。
あの荷船に乗って無かったら、私は新年までに安土に到着出来てないでしょうからね。
船酔いには参りましたけど……」
困乏(こんぼう)の笑みを浮かべた。
「にしても、瑠璃の京言葉、初めて聞いた。
京訛りで話すと、いかにも公家のお姫様って感じだな」
「そうですか?」
「意識して使わなかったのか?
家の事とかあって嫌だったとか……」
ちょっと遠慮したように問う政宗に、瑠璃は笑って答える。
「いいえ、周りに京言葉がなかったので、出なかっただけですよ」
「そっか」
「そやけど、久しぶりに話したら京訛りも楽しいおすなぁ」
わざと使って楽しそうに笑った。