第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
青葉城を発ってから痩せてしまった瑠璃。
初めての旅にしては長く過酷な旅。
寒く冷たい冬、ゆっくり休みながら行く時間も無い。
それでも愚痴も言わず、気丈に付いてきた。
そんな瑠璃を政宗は、誇らしく思うと共に、安土に着いて拝賀が済んだら、ゆっくり休ませて、甘やかせて、体調が良くなっても甘やかせてやろうと思っていた。
寒風に煽られ予想外に早く進んでいた。
「遅くても、もう2、3日で船を降りれるはずだから、頑張れよ」
「はい、船酔いはもう大丈夫そうですから、頑張るね」
疲れは隠せないが、瑠璃に笑顔が戻って来た。
「政宗も結構疲れてるでしょう、大丈夫?」
瑠璃が政宗を気遣う。
「ああ、今、大丈夫になった」
「今?」
「お前が笑うと疲れが吹っ飛ぶ」
政宗は眩しそうに目を細めた。
8日目
朝早く桑名に着港した。
桑名は上方(かみがた)圏の東端であり、
東諸国圏との接点地で、商人による自由都市が形成され、堺や博多に並ぶ港湾都市である。
桑名からは、京都近江方面への交通の便が良く道も整備されている。
積荷と一緒に上陸した2人。
「船頭(ふながしら)世話になった。
また何かの時にはよろしく頼む」
政宗が礼を述べると
「イヤでっせ〜、お互い様やないですか。
男の格好した姫さんもよう頑張りはったな」
頭は強面だが、豪快な笑みで瑠璃をも労ってくれた。
「おおきにぃ。皆はんも堺までおきばりやす。
お身体には気い付けてぇな」