第12章 睦月の旅路(海路にて安土へ)
小田原から海上の旅へと出た2人。
風任せに進む船は、揺れなければ馬よりもかなり快適で楽だった。
朝早く出航してから、波はずっと穏やかで、風もあり順調だった。
が、瑠璃は不調だった。
初めての航海は後悔だった。
「ゔ〜〜、ぅぅっ」
青い顔で横になっていた。
「ぎもぢわるい…ぎもぢわるいよぉ……」
「瑠璃、船も初めてか」
「はい……」
吐いたりはしないが、胃の中がユラユラして、
断続して吐き気を催した。
それが、初日から3日ほど続き、寝転んでばかりいた。
その間、瑠璃は陸路の馬旅を懐かしみ切望し、船に乗った事を心から後悔した。
4日目の朝
少し楽になって座っていられようになった。
5日目の朝
立って歩ける様になった。
6日目の朝
食欲が戻ってきた。
「政宗…この間の葛湯を下さい」
「お、腹減ったか?良かった」
やつれてしまった瑠璃の頬を撫でる。
(安土の御殿に着いたら死ぬほど
喰わせてやる。何喰わせてやろうかな)
安土に着いたら美味い物を作って、喰わせてやろうと思った。