第11章 小田原停泊(R18)
「なんだお前、
それで、そんなシケた顔して適当に鉄 打ってんのかよ」
馬鹿馬鹿しい、と言った風に呆れ顏で政宗は踵を返す。
「そんな言い方っ!
って、ど、何処行くんだよっ」
政宗は近くの店に入ると
「済まないが紙と筆を貸してくれ」
出された紙に筆で何やら書き付けてゆく。
「船の礼だ。
お前にその気があるなら、その書を持って安土まで来い。
明日の船、話をつけておいてくれ。頼んだぞ」
源蔵に書を握らせ、店の者に礼を言うと外に出る。
呆気に取られながらも、源蔵は政宗を追って
店を飛び出してきた。
「今のお前の様子じゃ、来ないな。
安土で会える事を期待せずに待ってるぜ」
自分の現状にただ燻っているだけの源蔵に、
発破をかける台詞を残すと、政宗は悠然と去って言った。
その場に1人残された源蔵は
「なんだよっ!何にも知らねぇくせによっ‼︎
あ、しまった〜、名前も聞いてねぇーーっ」
握っていた書を荒々しく懐に突っ込むと、
憤然と声を上げた。
政宗は源蔵は来ると踏んで、ほくそ笑んでいた。
(いーものみーつけた!あ、もう拾ったも同然だよな〜)
翌朝、政宗は瑠璃と共に、源蔵が口を利いてくれた、堺へ向う荷船に乗り小田原を出発した。