第11章 小田原停泊(R18)
「ほら、これもお前に土産だ。飲め」
火鉢の上の土瓶から湯飲みに湯を注ぎ、
瑠璃に差し出す。
「お茶ですか?」
「薬湯の葛湯だ」
政宗の意地悪な笑顔には気付かない。
「私の身体を心配してくれたんですね。
ありがとうございます、政宗」
罪悪感がチクリと政宗の胸を刺す。
「お、おう。疲労回復と滋養強壮効果だと」
「疲労回復…じゃあ、飲まなくちゃっ」
いただきます、と言って湯飲みに口をつけた
途端。
「あ"っっづぅ〜!
湯気で火傷しますよっ」
湯飲みから顔を背けて見えた火鉢の上の土瓶は、シュンシュンシュンと音を立てて蒸気をあげているではないか。
しかも、葛は熱を込め逃がさないのに。
「政宗〜、熱すぎます!」
瑠璃はお冠だ。
「悪い悪い」
(なんだ?今日の瑠璃、可愛いじゃねぇか)
緩む顔で瑠璃を見る政宗。
気を許した政宗しか隣に居ない事で、瑠璃も
知らず知らず、自分を見せていた。