第11章 小田原停泊(R18)
「政宗も、お肌カサカサしてますよ」
瑠璃が手を伸ばしてくる。
「ふーん。それじゃ、ここにも塗って貰おうかな」
政宗は瑠璃の手を掴んで引き寄せる。
チュッ
瑠璃の唇に自分の唇を押し付けた。
「んっ」
チュッチュッと何度か口付けた政宗は、
杏油の付いた瑠璃の指先を自分の唇に滑べらせる。
伏し目がちな政宗の妖艶な表情。
そんな政宗を目にして瑠璃は、
その唇に指先を挿し入れたい衝動に駆られる。
(指先、その唇で食んでーー……)
無意識に言葉が出そうになって、口を開きかけた。その時、
政宗の蒼い眼に下から見上げられる。
「‼︎」
まるで淫らな心を見透かされてるような気がして瑠璃は、羞恥で顔を真っ赤にし、慌てて手を引っ込める。
そんな瑠璃を政宗は、フッっと笑って抱きしめ
「続きはまたな」
と言った。
(絶対、見透かされてる……)
瑠璃は恥ずかしくて堪らなくなった。
「ところで瑠璃、アー…あーもんど?ってなんだ?」
「あ、えーっと、杏や桃と同じ種類の樹で、
胡桃みたいに実を食べるんです」
「ドングリみたいなのか?」
「まぁ、そんな感じです。美味しいですよー」
「へぇ、喰ってみたいな」
「政宗は何でも美味しそうに食べそうですね」
「喰えるって幸せだろ。生きてなきゃ喰えないからな」
「そうですね……」
この時代に来て、初めて食べ物を口にした時、そう思った。
美味しい、生きてる、それは幸せだと…。
そんなに前の事では無いのに、
もう随分前の事のように感じる出来事。