第11章 小田原停泊(R18)
宿に戻ると瑠璃は布団に包まって丸まっていた。
寝息も聞こえないくらい静かに深く眠っている。
「疲れたよな。よく頑張ったぞ」
そっと瑠璃を撫でる。
滑らかだった頬は冬の風に当たり、
カサカサに乾燥してしまっている。
「コレ、何とかしやてやんねーとな」
安土に着いてから参賀登城までにそれ程時間がない。
瑠璃を整える時間もあまり無いと言うことだ。
(籠に乗ってくれりゃぁ、身体の心配は無かったが、安土に着くのに、時間がかかり過ぎる…仕方なかった…)
仕方ないと思っても、疲れきって、
青白く、目の下に隈が出来てる瑠璃を見ると、心が痛んだ。
腕も脚も細っそりとして、抱きしめたら
折れてしまいそうに華奢な身体。
例えるなら、手入れの行き届いた庭に咲く牡丹の花だ。
観賞用の美しい花のよう。
雰囲気も外貌も、何も出来ない繊弱そうな瑠璃。
その瑠璃のどこに、馬に乗り旅をする力があったのか…。
(この女も、あの女も、俺達の知らない
底知れない何かを持ってるのかもな)