第54章 それぞれの流光
頭を下げれば
「…そっか、そうだよね。
旧家のお姫様だもんな。
こっちこそ、ごめん」
理解を示されたその中に、不憫とか同情のようなものを含んだ声と謝罪が、下がった頭の上を通り過ぎて行った。
(そう言う反応になるよね)
少し苛立った。
今迄はこんなこと、痛くも痒くもなかったのに。
あの時代で、私は少し変わったのかもしれない。
『心を開け』
(心を閉ざせ)
「…ッッ…」
(悟られたらあかん、強くッ)
「告白ありがとうございました」
努めて、柔らかく優しい声音で、
そっとお礼を言って、再び歩き出す。