第2章 女神の正体
報告の文を早馬で安土に送り、戦の後処理をして
ひと段落ついたのは10日も過ぎた頃だった。
瑠璃の見た通り右肩の負傷は思ったより
深かった。
医者には一月半は安静にし、刀も馬も禁止された政宗。
(身体動かせねぇって、本当退屈だな)
苦笑しながら廊下を歩いて行くと、瑠璃が
庭を歩いているのが見えた。
瑠璃には城内は自由にしていいと言ってあった。
怪しい行動も、言動も見られなかった。
そのかわり、この数日間、瑠璃が誰かと長話しを
しているのを見た事がなかった。
いつも1人でいるようだった。
(アイツは誰かれ構わず仲良くなってたな)
と安土城の姫を思い出す。
そして、足を早めると瑠璃の元へ向う。
「瑠璃」
「政宗様、どうかなさいました?」
声を掛けられた瑠璃は丁寧な言葉遣いに、
ふんわりとした笑みで応える。
(本当に大違いだな)
安土城の姫と比べて、内心(こころうち)で苦笑した。
「退屈だろ?出かけようぜ」
「どちらへ?」
瑠璃は興味を示したのか、
小首を傾げて政宗を見上げながら、
次の言葉を待っているようだった。
(疑ったりはしないんだな。ちょっと似てる)
「城下散策。
お前には城内から出るなっていってあったから、
外には出た事ないだろ」
政宗の言葉に、ふふふふふと笑って
「良いんですか?
皆で私の事見張ってたんじゃないですか?」
と、瑠璃が政宗を見る。
政宗は驚きを隠せなかった。
「お前、自分が見張られてるかも知れない、
と思ってたのか?」
「当り前じゃないんですか?
得体の知れない人間ですよ。
政宗様が見張れ、と命令してなくても、
まあ、
誰かが見張ってるんじゃないかな、とは思ってましたけど」
なんでもない事の様に瑠璃は話す。
普通の女がそんなことまで考えるはずがない。
(コイツ、どっかの刺客なのか…?)
瑠璃を見る。
(それとも、ただ、俺の事、試してやがるのか?)
ただ、試すのも普通ではない。
政宗は、頭を振って、その考えを追い払う。
「逃げられないよう、俺が案内してやるよ」
(試されてやるさ、なんかあったら、その正体
暴いてやる)
ニッと笑う。