第53章 君想ひ影探す
瑠璃は最初から清淑で透明な風か氷の様で、
それでいて、愁緒を感じさせる女だった。
(戦場で涙を流しながらも、弓を握り、
白い着物をはためかせていた、
凛とした姿…)
必要以上に近づいて来ない、近寄らせない。
冴えて冷酷に見せても、多情で淡く、脆く、壊れそうだった。
(氷輪…朧月…)
どんなに自分が悪者になっても、
正しいことは正しいと、目を逸らさず、
揺るがない強い心を持っていた。
(男顔負けの精神と才智、そのくせ突然見せる女の顔…俺が開いた、心と身体…)
明朗で甘い笑顔と、滑らかに揺れる瑠璃の白い身体が瞼裏に浮かんだ。
※瞼裏…けんり/瞼のうら