第53章 君想ひ影探す
けれど、なによりも存在自体が静かだった。
御殿に居ても、居ないかのように静かに存在していた。
どんなに静かで空気か風のようだっとしても、人の気配、息遣い、温度、醸し出す雰囲気があって、確実に存在していた。
居なくなってみて解った。
御殿内は シン…と静まりかえって、
もう長らく灯りが消えたままだった。
(小さくても、仄かでも、灯りは灯で、
何かと明るくしていた…)
薄暗く、ひんやりとして感じる。
(温かさが、ない…)
静寂であって、虚無虚静だ。
※虚無虚静…何も無く、心を虚しくして動かないこと。