第52章 隔世遼遥
もう数日、御殿に瑠璃の姿がない。
「政宗様、瑠璃様はどちらへ行かれたのですか?」
瑠璃付きの お夕をはじめ、
御殿の女中達か訝しがり始めた。
「美弥と一緒に着物を縫うとかで城にな」
いつまでも誤魔化せるわけがないが、
その場凌ぎの嘘を口にした。
「瑠璃様が数日いらっしゃらないだけで、なんだかとても、物静かで寂しゅうございますね」
「ああ…そうだな…」
(本当に…灯が消えたみたいに…)
瑠璃は美弥のように騒がしくない。
いても居ないかのようだった。
けれど、確実に存在していて、居なくなってみて、その存在の強さを実感した。