第51章 女神消失
あれだけ激しく降っていた雨はもう止んだ。
にわか雨、通り雨、そんな突然の雨だった。
重く垂れ込めていた雲も、既に薄い。
雨なんて降っていなかったかのよう。
降り出す前よりも、薄い雲。
雲は流されるように、過ぎて行く。
全部 見間違い、夢、幻覚
そう思うほどの短い刻。
けれど、半開きで落ちている傘が、
見間違いでも、幻覚でもないことを語っていた。
「俺のこと迎えに来て…
俺のこと、呼んだよな…?」
1人 呟く。
独り。
誰もいない。
「…何で居ないんだ、瑠璃…」
(目の前にいただろ?)