第46章 狂地からの救出
「…?」
(そういえば……)
家康の視線の先。
力無くも握られ続けている左手。
右手は普通に緩く開いているのに。
(何か、握ってる?)
一本ずつ、そっと指を解いてゆけば、
ポトッ…… と落ちた。
「陶器の破片……」
「どうした、まだ何かあったか?」
政宗が覗き込んでくる。
「これを左手にずっと握っていたみたいでー…」
破片を何度も強く握ったせいだろう、
掌はズタズタになっている。
「小さな傷が大きくなってるな」
小さな傷のたくさんついた手を、
優しく包み込んで、恫痛(とうつう)の表情で瑠璃を見る政宗。
※恫痛…悲しみいたむ心。