第46章 狂地からの救出
走り入る皆とは別に、光秀は、門から屋敷内をユルリと見回していた。
すると、門の陰から中を窺いつつ、
ブツブツ言いながら、青ざめ震えている
農夫がいる事に気付いた。
「男、どうした?」
光秀がしれっと声をかける。
「あ…あ…あの…小泉の旦那が……」
光秀の誘導に罹り、ポロポロと言葉を紡いてゆく農夫。
「そうか…冬は社の〆縄などをな…」
「へぇ、それに使うオオアサの落した葉などを高値で買い取って下さったんです」
農夫は事情を話す。
「それでは、俺が小泉の本宅に行って、恩赦をせねばな。
で…本宅は何処だ?教えてはくれまいか」
光秀は小泉には此処ではない本宅がある事、
そして、その場所も上手く聞き出した。
「お前は大丈夫だ。さ、此れを持って帰って仕事に精を出せ」
光秀はそっと農夫の手に包みを握らせ、背中を押して帰した。