第8章 神無月の決断
大切な写真を焼き捨てようとしている。
「本当に焼いちまって良いのか?」
「いいの。
この時代に来て、半年が過ぎました。
もう、帰る機会は来ないのだと思う」
瑠璃はじっとみていた写真から顔をあげると、政宗を見る。
「だから、私は、もう、もとの時代には、
あの家には帰らない。
ここで生きていくって決めました」
美しい銀鼠色の瞳を真っ直ぐに政宗に向けると
綺麗に笑った。
その笑顔が政宗にはどこか悲しそうに見えて、
胸がギュッと締め付けられ、心が揺れ騒いだ。
「決めたって…
半年過ぎただけだろう。
本当は帰る事、諦めたんじゃないのか?
帰りたいんじゃないのか?」
政宗は不安になって問う。
瑠璃を現世に帰したい訳でも、
帰って欲しい訳でも無い。
けれど、
(諦めて此処に残ると決めたとしたら、
後悔が残るじゃねぇか)
後悔したまま、未練のあるまま、
此処に残って哀しく過ごして欲しくはない。
だから、そんな気持ちで問いただした。