第45章 煙に隠れた人探し
歩きながら
「気付いたか」
「どう見てもおかしいだろ。
こんな港のこんな時刻に、女がそぞろ歩いてるなんて」
別段何でもないこの港の光景が、
女と茶屋の常連には何か、引っかるらしい。
普通の大きな港街。
船商家、問屋、倉庫が並び、
一本中に入れば食堂や甘味屋。
そのまた奥の通りは茶屋が軒を連ねている。
なんのことない茶屋に見えるが、
実は二階は女の寝るための宿となっている。
だから、その通りには、華やかに着飾り、
外に置かれた縁台で鈴のように高い声で話、
笑い、通る男に流し目を送る女達が咲いている。