第44章 煙に霞む屋敷廓
瑠璃の怯えを感じとったかのか、男が笑う。
「心配せずともよい。存分に痛めつけた後、
お前の首だけ信長の元へ帰してやる」
「私を殺して自分も殺されるつもりなら、
そうしたら良いわ」
瑠璃は負けずに言い返す。
「信長など返り討ちにしてくれるわ」
「たいそうな自信やけど、私がアナタに殺される前に、アナタが拷問にかけられて死を見るわよ。
賭けてもええわ」
瑠璃はなんとか、精一杯、平常心と冷静を保って嘲って見せる。
何か言っていないと、すぐにボーッとしてくるのだ。
(負けるな、持ってかれるな、しっかりするのよ、瑠璃っ)
自分自身を鼓舞する。
(大丈夫、信長様が、政宗が助けに来てくれる)