第44章 煙に霞む屋敷廓
(色んな薫りが、混ざって…気持ち悪い…)
薫りのせいか、混じっている物の成分のせいかは判らないが、屋敷に充満する匂いの中にある物のせいに違いない と、瑠璃は思った。
「ふっはははははっ、
美しい女が苦痛に顔を歪めるのは
実に愉快で気分か良いわ!」
苦しげに眉を寄せ、口を手で押さえている瑠璃を、男は満足そうに見て高笑いする。
(うるさい…頭に、響いて…うるさい、うるさいっ…!)
男の笑い声、話し声がザラザラと頭の中を擦り、反響して騒がしくて、堪らず瑠璃は、縛られた手で耳を塞ごうとして、よろけて膝を着いた。
「もう、足元も覚束なくなったか?」
嘲られる。
(しっかりせな…)