第44章 煙に霞む屋敷廓
下間氏はこの辺りの有力武士で顔も手も広くやっていた。
船商家 平戸屋を出て向かったのは、
「コレは下間様、ようこそ」
「女の様子はどうだね。足りてるか?」
「へぇ、今のところは。…しかし、月に
2.3人は駄目になっちまいますね」
店子の主人は弱り顔をして見せる。
「煙草は適量を、お前さん達が、よう 管理してやらんと」
「へぇ、分かってはいるんですがね」
頭を掻いても、悪びれた様子は全く無い。
「今日は遊んで行かれますか?」
「いや、ワシは阿呆にはなりたくない」
この遊廓には酔いそうな香の薫りに混じって、
阿呆煙草の煙が燻(くゆ)っていた。