第5章 スカーフ
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財前と買い物をしてから数日がたち、遥の誕生日となった。約束していた通り、遥の誕生日を祝う為に彼女の家を訪ねた。
チャイムを鳴らして直ぐにドアが開いた。顔を出したのは彼女の母親であった。ニコニコと笑みを浮かべ、頬を紅潮させている。愛娘の誕生日と言う事で余程テンションが上がっているらしい。
「いらっしゃい名前ちゃ~ん♡♡うふふ♡もう準備はしてあるから早く遥ちゃんのお部屋に行ってあげて♡あの子、貴方が来るのをソワソワしながら待ってたんだから♡♡」
「…そうなんですか、そう言ってもらえると嬉しいです。お邪魔しますね。あ、これ皆さんでどうぞ」
「あらもう!気なんてつかわなくていいのに~!けどありがとう、嬉しいわ♡」
名前が差し出した手土産を受け取り、頬に手をあてにっこりと笑った母親。本当に可愛らしい人だなぁ、なんて思いながら頭を下げ楠家へと足を踏み入れた。
真っ直ぐ遥の部屋へと向かい、数回ノックする。直ぐにドアが開き、部屋の主である彼女が顔をだした。それと同時に食欲が唆るようないい匂いが鼻腔を擽る。
「お待たせ。私が来るのソワソワしながら待ってたんだって?」
「してたわよ。…ふふ♡ほらほら♡渡すもんがあるんでしょ?もったいぶらないで早く出しなさいよ」
「…あぁ、そう言う事か。はい、お誕生日おめでとう」
「あは♡ありがとう♡誕生日と言えば誕生日プレゼントでしょ♡プレゼントはなんだろう?身につけられるものなら良いんだけどなぁ~
」
「あはは、それはあけてからのお楽しみって事で。身につけられるものだったらいいね?」
「何よその言い方、意地悪ね~。ま、とりあえずプレゼントは後でのお楽しみに見るとして…はい、座って座って。お母さんが沢山料理作ったから温かいうち食べよ」
そう言いながら指さした先にはテーブルがあった。テーブルの上には美味しそうな料理がずらりと並んでおり、いい匂いをこちらまで運んできていた。ぐぅ、と思わず腹が鳴る。